インターネット/イントラネットを
簡単・格安に導入できる
“らくらくさーばー”を開発
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中堅成長企業をサポートする経営情報誌『ビジ ネス倶楽部』97年1月号は3ページにわたって株 式会社キャラバン代表取締役・野口壽一とのイン タビュー記事を掲載しました。貿易・DTPから出 発しインターネットの活用へとサービス範囲を拡 大してきた当社の足跡がよくまとめられているの で、下記にご紹介いたします。『ビジネス倶楽部』は、税研情報センター(発 行人・藤原伸二/東京都千代田区西神田 1-1-3 税研ビル/TEL:03-5276-3671)が発行する月刊 誌。発行部数約2万部。
(下記の掲載原稿は、スペースの関係で割愛さ れた部分を一部復活してあります。)
<目次>はじめに
会社の創業
インターネットとの出会い
キャラバンのネットワーク環境
“インターネットらくらくさーばー”の開発
これからのキャラバン
インターネットビジネスを考えている方へのメッセージ
はじめに
『テレビ、新聞・雑誌に氾濫するインターネットビジネス。言葉だけはだれでも知っているが、実体となるとなかなか見えてこない。実際に使ってみないとその良さ、活用方法などを理解できない。ホームページによる会社紹介にしても、社内の省力化、合理化を目的にしても、中小企業であれば、経営者がまず使ってみる必要がある。すべてはそこから始まる』(株)キャラバンの野口社長は従来からのコミュニケーションであった、面談、電話、FAXに電子メールが加わり、21世紀に向けたビジネスは展開する、その手助けをすることがわが社の使命である、と熱っぽく語った。
会社の創業
株式会社キャラバンはもともとインターネットビジネスを目的とする会社ではなかった。社長である野口壽一氏は、創業前は、受託翻訳やマニュアルなどの依頼原稿を書く仕事などフリーの編集者をしていた。また、学生時代からシルクロードに関心を持っていて、80年に、駐日アフガニスタン大使と知り合い、同国との交流を続けていた。キャラバン創立のきっかけになったのは、同国に訪問団を引率して行くたびに同国の通商大臣から日本とアフガニスタンの貿易不均衡の是正を訴えられたことだった。日本の商社や会社を訪ねて協力を要請したがこの訴えを正面から受けとめてくれる企業はなかった。それでは、ということで「貿易」、「海外諸国の経済・政治・技術に関する情報収集・配布」、そしてそれまで本業としてきた「翻訳・出版」業の3本柱で定款を作り、1987年に、株式会社キャラバンをスタートさせた。88年に奈良で開催されたシルクロード博覧会では、アフガニスタンの代理人として、博覧会主催者の奈良県やNHKとともに、カーブル博物館所蔵の文物を日本に呼ぶために奮闘した。これは、当時の国際政治情勢により実現できなかったが、キャラバンは設立したばかりの会社であったにも関わらず、シルクロード博覧会中の6カ月間、アフガニスタンの工芸品や民芸品を展示即売する権利が与えられ、アフガニスタンの宣伝に大いに寄与した。
しかし、アフガニスタンの政治情勢は、会社設立時点の予測に反して悪化を続け、貿易関係の業務を縮小せざるを得ない局面を迎えた。
インターネットとの出会い
いきおい、定款の3番目に上げていた翻訳や出版関連業務の比重が高まった。たまたま、従来から取り組んでいたマッキントッシュ(Mac)コンピュータを使ったDTP(デスクトップパブリッシング:パソコンを使って出版物を作成する技術)が注目され、アメリカ系企業2社から継続的にマニュアル制作を受注することができた。アメリカから、英語版のDTPデータが送られてき、これを日本語に翻訳して印刷にかける仕事に取り組むうち、カラー処理までの100%デジタル処理を社内設備とスタッフだけでできるようになり、日本の印刷業界でも最先端に位置するノウハウを得ることができた。
それまで、在宅作業者とのデータ交換は、パソコン通信を利用していた。インターネットに興味はあったが、まだまだ政府関係・大学・一部大企業のものであった。状況が変わったのは、94 年に個人向けの格安プロバイダーが登場し、 WWW(ホームページの配布・アクセスシステム)が注目を集めたときだった。まず個人でインターネットに加入し、いろいろ遊んでみた。その結果、「インターネットこそ究極のDTPだ」という結論に到達し、これを顧客サービスに使えないか研究することにした。この背景としては、DTPによってある程度高品質で格安なサービスを提供できるようにはなったが、折からの用紙代高騰により、顧客からのコスト削減要求に応えるのがむつかしくなっていたこともあった。
結論として、紙による情報提供がなくなることはないが、データの作成を完全デジタル化し、伝達したい情報の質・内容によって、紙やCD-ROMやインターネットなどの媒体に合わせてデジタルデータを使い分けていけば、より効果的であり、データの保存・再利用も容易になると確信し、顧客にはインターネットを核としたデジタルデータ化を推奨していった。
この過程では、インターネットを熟知していた、当時富士通のSE(システムエンジニア)部門にいた平野氏(平野勝三:現キャラバン取締役CTO)やキャラバンの若い学生アルバイトたちが手伝ってくれ、パソコン通信で知り合った社外の技術者集団がアドバイスしてくれた。このような背景があって、予想以上のスピードでインターネット事業のたち上げに成功した。
ちなみに、96年に入って、このような技術者集団と世田谷でインターネットに関心を持つビジネスマンとが合流してインターネットをインフラに 起業家支援を行う246コミュニティという団体ができ、キャラバンがその事務局を担うことになった。インターネットを活用したビジネス展開にいっそう弾みがついた。
実際の事業は、95年秋に、(社)日本システムハウス協会のホームページ制作の仕事が舞い込み、これがとっかかりになった。さらに、「シカゴにサーバーを配置してインターネットビジネスを始めた」、との年賀状を出したら、印刷業を営む昔の友人から電話があり、話を聞かせてくれと言われた。彼もインターネットのサーバーを導入したくて、ある大手の電気メーカーに見積もりを依頼したら1000万円を超えたので迷っていた。ところが、その見積もりと同じシステムをキャラバンが納めるとすると、約5分の1の価格で可能であることが判明。この友人を顧客第1号として「インターネットらくらくさーばー」を開発、商品化した。富士通にいた平野氏も、96年6月には正式に富士通を退社し、キャラバンでインターネット起業家としての道を歩き始めた。
キャラバンのネットワーク環境
このような経過で、パソコンとその上で稼働するLinuxというUnixのOSを使った新商品「インターネットらくらくさーばー」が誕生し、商標登録も完了した。キャラバンの特徴は、サーバーシステムを商品として提供しつつ、シカゴと東京の2カ所にサーバーを配置し、コンテンツサービスをも提供している点にある。しかも、アメリカでcaravan.netというネットワーク業者としてのドメインも取得している。このふたつのサーバーを使って、日本ではco.jpによるバーチャルホストサービスを可能とし、シカゴサーバーはT1回線を使った高速情報提供を可能としている。
また、96年10月に、キャラバンは、オフィスのネットワーク環境を強化するため、電子商取引システム・TRADE'exの開発・販売をしている米国フロリダ州の"TRADE'ex Electronic Commerce Systems, Inc. "の日本法人・トレイデックス・エレクトロニック・コマース・パシフィック, Inc.、半導体のコンサルタント会社エム・エス・シーと3社合同で新オフィスを開設した。ここに128KBの専用線を引き、ワークステーションのサーバーを導入し、インターネット環境を増強するとともに、社内にはイントラネット環境を構築した。
キャラバンは、自社のオフィスそのものをインターネット/イントラネット導入例のショールームとして公開している。トレイデックス社は、現在実用システムとして稼働している国際規模の電子商取引システムとしては唯一のTRADE'exシステムのデモ・プレゼンルームとしてこの環境を活用している。
キャラバンは、従来のDTP技術から出発した。そしていま、インターネット技術をコア技術とし、デジタル情報の伝達・交流を可能とするあらゆるメディアの活用を促進する、総合的なコミュニケーションカンパニーへの脱皮・成長を目指している。
“インターネットらくらくさーばー”の開発
インターネットの利便性のひとつに、在宅勤務、リモート会議など、業務の分散化を可能にする点がある。同じように、インターネットのインフラサービスそのものも設備を1カ所に集中するのでなく、分散化することにより、無駄な投資を削減したり、諦めていたインターネットの利用を可能にする。“インターネットらくらくさーばー”は、このような可能性の原型商品である。従来、サーバー管理技術者がいなかったり、いても忙しくてサーバーの導入をためらっているような企業向けに、システム管理をセットしたパッケージ商品にまとめあげたのが“インターネットらくらくさーばー”である。さらに、このシステムの発展形として、キャラバンでは、「らくらくプロバイダーシステム」の販売を始めた。これは、インターネット人口を増大させるためにはプロバイダーは必須の事業であるが、設備投資が大きいため、なかなか採算がとりにくいという問題点を解決した商品である。これは、プロバイダー事業を行う現地にはアクセスサーバーのみを配置し、管理センターにシステムの中心機能と管理技術者を置き、コスト・労力の両面で現地負担を軽くし、現地がインターネットを使った本来のビジネスに専念できるようにしようというものである。この商品は発表前にすでに2件の引き合いがあり、構築作業も最後の詰めの段階にきている。この商品は、フランチャイズ展開が可能で、参加企業が増えれば増えるほど1件あたりの導入価格が劇的に下がるという特徴をもっており、キャラバンはこの特徴を生かす営業のパートナーを募集中である。
プロバイダー事業はなかなか利益を上げにくい仕事であるが、インターネットを普及するためには絶対に必要な仕事である。一方、導入企業からみれば、顧客拡大と顧客保持にうってつけの事業といえる。都市部だけでなく地方への普及を考えれば“インターネットらくらくさーばー”と「らくらくプロバイダーシステム」はドンピシャの商品であろう。
これからのキャラバン
現在はまだ、翻訳やDTP関係の売上げが多いが、インターネット関連の売上げが後半期急増している。ホームページのコンテンツは紙媒体用のDTP技術と設備をほとんどそのまま流用して制作できる。動画やサウンドがこれからの課題だが、これらのデータは重く、インターネットの回線事情がよくならない限り、これに固執するとかえって高コストで効果のないサービスを顧客に押しつけることになる。キャラバンとしては、インターネットインフラの進展具合をにらみながら、コンテンツ制作サービスの内容を高度化するスタンスを取っている。いまのペースで行けば、インターネット事業部は今年中に採算に乗り、来年度は従来の売り上げと肩を並べるぐらいまでの成長が見込める。
インターネットビジネスを考えている方へのメッセージ
ホームページでの情報提供、通信販売、メールシステムの導入、顧客や社内とをネットワークでつなぐ等々は、会社の将来性を考えると、ぜひやりたいと考えている経営者は多いはず。しかし、そのためには、パソコン技術だけでなく、サーバーの管理、秒進分歩のインターネット技術、コストなどの壁を越えなければならず、「敷居」が高い。キャラバンの目的はこの「敷居」を限りなく低くすることである。野口社長の『お客様にインターネットの賢い利用方法を知ってもらいたい。上手に使えばとんでもなく役に立つ技術だということをお伝えしたい。ホームページがインターネットだというような風潮があるが、会社経営者や営業担当者には、ぜひ電子メールを知ってほしい。これほど素晴らしい営業ツールはないと断言していいほどです。電話・FAX・コピー機を使うような感覚でインターネットを利用できる環境を提供する、これがキャラバンの夢ですが、この夢は、もうすでにかなりの部分、現実になっています』との言葉には説得力があった。
『インターネットは使ってみて始めて、そのよさを理解できます。わたしもそうでした。だから、トップの方が恐れずにチャレンジしてみてください。そうすれば、インターネットで何ができ、なにができないか見当がつくと思います。インターネットの導入は、パソコンとモデムさえあれば、月々数千円の接続費用から始められます。役に立つと確認できたものから順に導入していけばいいのです。通常の新規設備導入と違って、インターネットの場合、最初に大金をはたく必要はありません。ブームに煽られて無駄な投資をしないためにも、まだインターネットを利用していない方は、電子メールの使用から始めてみてはいかがでしょうか』との言葉にも思いやりを感じた。