<連載>(『マネジメント倶楽部』2001年11月号より転載) | ||
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野口壽一(株式会社キャラバン・代表取締役) | ||
iモード(NTTドコモ)を皮切りに、キャリア各社が同種のサービスで追随し、あっという間に携帯電話はインターネット端末としての重要な位置を占めるにいたった。この夏、iモード=2609万台、EZウェブ=818万台、Jスカイ=790万台、合計4217万台。携帯電話の台数が固定電話の台数を超えたのは昨年の4月だったが、もうすぐ、インターネット携帯だけで固定電話の総台数を超えようとしている。固定電話の衰退が危惧され始めた2001年6月後半、Lモードサービスが、NTT東日本とNTT西日本によって開始された。このサービス、果たして固定電話サービスの救世主となれるのだろうか? |
![]() Lモードサービスの背景と目的 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Lモードサービスが開始された背景は、いうまでもなく、インターネットユーザー人口の増加である。iモードをはじめ携帯電話各社がインターネット接続サービスを始めた結果、膨大な数の利用者が生まれたが、ユーザーの中心は20代から30代の学生・社会人が中心である。このような状況を考慮して、インターネットに比較的なじみの薄い主婦層、高齢者層をターゲットにしたサービスがLモードである。 サービス名称・Lモードにその心意気が込められている。名付け親のNTTは次のように説明している。「『L』はLiving(生活に役立つ)、Local(地域に密着した)、Lady(女性とご家族のために)を意味します」――家族みんなに役立つ電話、それがLモード。つまり携帯は個人ツール、Lモードは家族ツールというわけである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() Lモードサービスとは? | |||||||||||||||||||||||||||
LモードはLモード対応の電話機・ファックスからのメニュー操作により簡単・便利に「簡易メールの送受信」や「簡易HTMLで記述された情報の検索」が可能なサービスだ。サービスの契約者は全国のIC公衆電話機においてもサービスの利用が可能で、たとえば外出先から留守中に届いたメールの確認などを行うこともできる。 サービスの特徴としては、 ・Lボタンひとつで自動設定が可能。パソコンのような難しい設定はまったく必要ない。 | |||||||||||||||||||||||||||
![]() サービスの体系 | |||||||||||||||||||||||||||
では、もっとも大切なサービス内容はどうなっているのだろうか。 Lモードの最大の利点のひとつは、パソコンではない点だ。パソコンだとマシンそのものを起動するのに時間がかかる。スイッチを入れてから立ち上がる途中でトラブルが発生することもたびたびだ。インターネットで何か調べものをしたり、メールをチェックしようとおもったら、さらにまたブラウザやメーラーを立ち上げなければならない。しかも、用を済ませて電源を切るまで、またひとしきり時間がかかる。朝の忙しいときだといらいらして健康にも悪い。その点、Lモードはメニューを押すだけで、やりたいことがすぐできる。 ●情報検索サービスの利用シーン Lモードには便利なメニューが最初から準備されている。ボタン1発、次のような検索サービスをすぐ利用できる。 | |||||||||||||||||||||||||||
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「子どもが熱を出した、さあどうする。病院を探さなくちゃ」というとき、<健康/医療/介護>ジャンルが役に立つ。LのLocal情報だ。 「銀行に行く時間がない、どうしよう」「これを買いたいけど買いに行けない」というとき、マネーや通販などのジャンルを使えばよい。女性や高齢者をターゲットとするLだ。 「今日の夕食をどうしよう」、そんなときは料理/出前が役に立つ。LivingのLだ。同じようなサービスはiモードなどでも受けられるがまさか電話片手に料理はできない。そんなとき、Fax付きLモードならレシピをさっとプリントしてそのメモを脇に置いて料理ができる。Lモードの独壇場だ。操作はすべてLボタン1発で即メニューが表示され、非常に簡単。後は銀行のATMを操作するのと同じだ。ほとんどの人にとって迷うことはないだろう。 「家族旅行、どこに行こう?」「みんなであのイベントを見に行こう」といったときも旅行情報、イベント情報、スポーツ情報、チケット予約などができる。 これらのサービスにはiモードやパソコンを使ったインターネット利用と比べて真新しいものがあるわけではないが、家庭で素早く簡単に情報を入手できる点でこれまでのサービスを越えている。 |
![]() メールサービスの利用シーン | |
Lモードを利用すればパソコンを持っていなくてもメールを利用することができる。難しい設定もなく誰でも始められる。Lモードでは最大2000文字までのメールがやり取りできる。パソコンや携帯電話にメールを送るときもLモード対応電話機などと同じ手順で送ることができる。 NTTはLモードの設計にあたり、Lモードでのメールの利用シーンとして家族の一員が外部から家庭に連絡するケースを、よく使われる例として想定している。たとえば「お父さん」の「帰るメール」である。外から、帰宅時間や夕飯のこと、頼みごとなどを伝えられる。また、学校からの連絡をLモードのメールグループ機能をつかって1回の操作で全員に送ることも可能である。パソコンや携帯電話との普通のメール送受信が可能なのはいうまでもない。Lモードでのメールアドレスは、「希望の名前@pipopa.ne.jp」となる。 | |
![]() Lモードの将来性 | |
こんなに便利なLモードだが、問題点はLモード対応電話機を購入しなければならないこと、価格が割高なことの2点である。一般的な相場では、普通紙ファックス電話機だと2万円強から3万円弱というところだろうが、Lモード対応となると、さらに1、2万円高くなる。 NTT東日本によれば8月初旬のLモード契約者数は東西合わせて約1万件とのことである。スタートしたばかりとはいえ、1年間で150万から200万件の契約目標数からすれば微々たる成果でしかない。では、Lモードは普及しないのだろうか。 現時点で将来を間違いなく予測することなどできないが、5000万固定電話に対してある程度の普及を予測することはできる。その理由は、iモードやパソコンインターネットが持っている利用障壁を確実に低くしているからだ。 加えてLモードならではの機能が付加されている。その一例としてファックスと電話機を連動させる「FAXTO」という機能がある。これは、注文などの返事を入力すればそれが相手のファックスに送信される機能である。現在のバーチャルなインターネットECに一石を投じるかも知れない。さらに、Lモード契約者の地域特定が可能なことがある。したがってコンテンツ提供者は地域的にセグメントされた顧客により適切な情報を送信できる。天気予報、交通情報、テレビ・ラジオ番組、イベント情報、役所からのお知らせなど、地域が特定されることにより意味を持つ情報は限りない。LモードのLocal性は注目に値する。すでに述べたことだが、情報を簡単にプリントできる、という点もiモードなどのモバイル端末にない優位点である。
LモードについてはNTT西日本が運営しているLモードサイト(http://www.ntt-west.co.jp/Lmode/index.html)で詳細な情報を入手できる。ゲーム感覚でバーチャルにLモード操作を体験できるコーナーやLモード導入実例が多数掲載されており、参考になる。 | |
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