<連載第6回>(『マネジメント倶楽部』1998年8月号より転載)

探 訪
 インターネット活用事例

野口壽一(株式会社キャラバン・代表取締役)

 前回、「SOHO、小規模LAN、インターネット」のタイトルで、LAN導入の効用を紹介したところ、「よさは分かったが金がかかるのではないか」とか「導入も難しいだろうし、導入後の管理も大変では?」という質問や心配の声が届いた。そこで今回は、投資効率抜群で、かしこいLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)の構築法、インターネットの活用法を紹介する。

 パソコン2台とプリンター1台 

 パソコン2台でファイルをやりとりしたい。あるいは2台のパソコンで1台のプリンターを共有したい……。このような要求を満たすのがLANである。
 一般的なLANの構成では、サーバーと呼ばれるもう1台のコンピュータを導入する。このサーバー用にワークステーションか高性能パソコン、端末のパソコン用に台数分のネットワークカード、ネットワーク用のケーブルやハブと呼ばれる接続機器、インターネットに接続するためのルーター、ネットワーク用のOSやアプリケーションソフト、バックアップ装置、電源装置などのシステムおよび導入のための技術料・作業料等々を加えると、数年前であれば7、8百万円、現在でも2、3百万円はかかってしまう。LANの便利さを理解しても、導入に二の足を踏む最大の理由がこれだろう。
 しかし、目的を限定すれば、最小の投資で簡易にLANの機能を実現することができる。
 例えば、ファイル交換だけができればよいと割り切れば、パソコン同士を「RS-232Cケーブル」というケーブルで直結するピア・トゥー・ピア接続という解決方法がある。これであればケーブル代数千円でフロッピーを使わないファイル交換が可能となる。プリンターまで共有したいと思えば、「プリンタ切替器」という優れものがある。これは2台のパソコンと1台のプリンタをスイッチで切り替えるもので数千円も出せば手に入る。合わせてもわずか1万円そこそこで、ファイル交換とプリンタの共有という、LANで最も使用頻度の高い便利な機能を手軽に体験できる。
 パソコンがマッキントッシュであればもっと簡単。マッキントッシュにはもともとアップル・トークというネットワーク機能が標準で備わっているからだ。必要なものは1台あたり千数百円のアダプタとケーブルだけ。ケーブルは普通の電話コードが流用可能だ。アップル・トークであれば、ファイルやプリンタを共有できるだけでなく、アプリケーションや各パソコンにつながっているハードディスクやCD-ROMドライブ、MOドライブなども共有できる。インターネットへの接続もモデム以外の追加投資なしに可能となる。

 ISDNとMN128-SOHO 

 上述の簡易LANでは、プリントするときにいちいちスイッチを切り替えたり、インターネットとの接続が1台毎にしかできなかったりと不便な点が多々ある。さらに、接続するパソコンも2、3台止まりと制限だらけだ。
 ところが最近、同じ簡易LANでも本格的なLANに限りなく近く実用的なシステム、つまりパソコン数台から10台くらいまでなら専門家の手をわずらわさなくても、あたかも専用線接続しているかのような感覚でインターネット接続できるLAN構築を可能とする機器が登場してきた。(株)ビー・ユー・ジーと(株)NTT-TE東京が開発したISDNルーターのMN128-SOHOだ。これを使用してINSネット64(ISDN)というデジタル回線でインターネットと接続するシステムは使い勝手がよく、システムの拡張性にも優れている。しばらく前に「ロクヨン、ロクヨン、イチニッパ」とNTTがコマーシャルしていたのをご記憶の読者も多いだろう。これが、64Kbpsの通信回線を2本内蔵し、インターネットに接続しながら電話も使えるINSネット64というデジタル回線だ。
 例えば、MN128-SOHOを使えばウインドウズのインストールができる程度の知識で、パソコン3台とプリンタ1台を接続しファイルやプリンタの共有を実現しあたかも専用線接続しているかのように各パソコンから同時にインターネット接続できるシステムを簡単に構築できる。MN128-SOHOの標準価格は69,800円(DSU内蔵モデル)。実売価格は5万円前後だろう。これにパソコン3台分のイーサーネットカード、ケーブル類を合わせても10万円足らずで十分実用的なLANを組める。ハブという実売価格1万円以下の機器を導入すれば何台でもパソコンの台数を増やせるが、10台未満にとどめておいた方が現実的だ。
 次に、ISDNの導入であるが、新しく契約する場合は普通のアナログ電話回線の新設契約の場合と同じく、施設設置負担金72,000円、契約料800円、工事費(状況によるが2、3千円)が必要。月額の回線使用料は住宅用が2,830円、事務所用が3,630円である。既存のアナログ電話回線をISDNに切り替える場合は、契約料800円と工事費(状況によるが数千円)だけだ。月々の通話料は通常のアナログ電話料金と同じである。いずれにしても二の足を踏むような金額ではない。

 イントラネットも実現する便利な製品群 

 MN128-SOHOの画期的な点は、ISDNだけでなく専用線によるインターネット接続もカバーしている点である。さらに、専用のサーバーを導入すれば本格的なイントラネット・システムへの拡張も可能になる。イントラネットとは、各地に支店や営業拠点を持っている企業が、専用線でなくインターネット回線を利用して敷設する一種の自社専用の広域ネットワーク(WAN)である。NTTが提供しているOCNエコノミーサービスを利用すれば月額3万8000円で64Kbpsのインターネット専用線に接続できる。この回線とMN128-SOHOを使った次のような本格的なイントラネットシステムを97万円台で実現した例が報告されている。

本社:端末10台(ただし端末代、イーサーカード代は含まず)  
MN128-SOHO、サーバーマシン(Pentiumマシン)、OS(WindowsNT)、Mailサーバーソフト、ケーブル、導入作業費、OCNエコノミー加入費、ドメイン名取得手数料、IPアドレス取得手数料、OCN配線工事費
大阪営業所:端末5台(ただし端末代、イーサーカード代は含まず)  
MN128-SOHO、ハブ、ケーブル、導入費用、OCNエコノミー加入費、IPアドレス取得手数料、OCN配線工事費
その他の地方全3カ所:端末3台(ただし端末代、イーサーカード代は含まず)  
ターミナルアダプタ、ケーブル、OCNダイヤルアクセス加入費

 ぞくぞく便利な製品が登場 

  ネットワーク技術の進歩は秒進分歩。便利な機器、ソフトが毎日のように発表されている。社内LANやイントラネットをオールインワンで実現するサーバーも何種類か発売されている。また、簡単になったとはいえ、システムを使いこなすまでにはそれなりの習熟を必要とする。そこで、ハードとメンテナンスをセットにしたサービスも開発されている。あるメーカーは、サーバーのリース料(5年)、128KbpsのOCN回線料、技術メンテナンス料を含めクライアントパソコン5台のシステムを月額10万7400円で請け負うサービスを始めている。 どんなに少人数の事業所でも、使用目的をはっきりさせてインターネットおよびLANを導入すべき時代が到来したと言える。


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