<連載>(『マネジメント倶楽部』1999年6月号より転載)

探 訪
インターネット活用事例
「キラリと光る」Webストアたち
オンラインショップ全面開花の予感

野口壽一(株式会社キャラバン・代表取締役)

 アメリカでは、インターネット上で展開している”電子書店が設立3年で年間売上高10億ドルを達成したり、証券市場にも上場されてインターネット株式ブームを先導している。
 もともと通信販売が盛んな国の話ではあるが、日本でもWebサイトの運営しだいで着実に成果をあげているケースも少なくない。インターネットを使ったオンラインショップ全面開花の予感が伝わってくる。

 逸品に特化し成果をあげる 工夫次第で成果は大 

 日本では、大企業が手掛けるオンラインショップ、特にデパートのように特定のサーバー上に多くの店舗を集めたショッピングモールはどこも苦戦している。このような現実が「インターネットは儲からない」という風評のもとになっている。
 ところがこれらの失敗は「店舗をたくさん集めればアクセスが増えるだろう」「現実の店で売れているからオンラインでも売れるだろう」「インターネットの経費は少額ですむからなんとかなるだろう」といった安易さに原因がある。インターネットが駄目なのではなく、インターネットの特徴と「あきないの原則」を無視して、現実の店舗をWeb上に移しただけ、あるいは通販本をネット上で展開しているだけのオンラインショップがあまりにも多いのである。

 ネットの特徴と商いの原則が大事 

 その証拠に、日本でもインターネットの特徴と「あきないの原則」に忠実にサイト運営している店舗は着実な成果を挙げている。全般的にインターネット通販の売上規模自体は以前から少しずつ成長傾向にあったが、98年末のお歳暮商戦では成長規模が顕著に拡大していると言われている。そのような傾向を牽引したのは、「有名オンラインショップが軒を連ねるショッピング・モールのIPPIN!!( http://ippin.vip.co.jp/ )では参加16店舗における98年12月期(1カ月間)の売上が3,500万円を突破した。また、ショッピングモールの楽天市場( http://www.rakuten.co.jp/ ) に出店している東急百貨店でもお歳暮の売り上げが1000万円を突破している。」(『JNEWS LETTER 99.1.25』)と言われる店舗などである。
 この「IPPIN!!」は、「逸品」と「一品」をかけたものと思われるが、インターネットの特徴をよく理解したネーミングであり、売り方にも賢い工夫が随所に散りばめられた必見のサイトである。他にも、本誌で以前に紹介した電子部品のロジックデバイス(http://www.caravan.net/ld/)を始め、ジュエリー販売の三扇堂 ( http://www.sansendo.com/ )、傘専門店の心斎橋みや竹「カサヤ・コム」( http://www.kasaya.com/ )、北海道の海産物専門店清水商店が運営するたらこの店「タラコ・コム」(http://www.tarako.com/ )、同じく北海道のジンギスカン専門店のざき精肉店が運営する「ニクヤ・コム」(http://www.nikuya.com/ )等など、賢いサイトは今や枚挙にいとまがないほど増えている。
 当社でも、オンラインショップ成功原則を実証するため、今年始め、リサイクルウオッチ「ReWATCH」のオンラインショップ(http://blvd.caravan.co.jp/rewatch/)を立ち上げて販売を開始した。その結果、ひと月で60個を売上げ、現実のすべての店舗を抜いて月間最高売り上げを記録した。

 オンラインショップ必勝5原則 

 オンラインショップで成功するには、特別な技術や高額の投資は必要ない。成功しているショップを分析すると、つぎのような「必勝5原則」が見えてくる。

1. ひとつの商品(逸品・一品)に特化すること
 自らが持つ既存のビジネスインフラやノウハウを最大の強みとして活かし、特定の商品ジャンルに特化する。様々な分野の商品を漫然とならべて成功しているサイトはひとつも無い。

2. ユーザーと密接なコミュニケーションを取ること
 成功しているサイトは店主の個性を前面に出したホームページを作り、専門分野の知識やうんちく情報をふんだんに提供している。読むだけでも楽しいページだ。こうしたサイトは、ユーザーと1対1のコミュニケーションができる電子メールを重要視し、注文や相談のメールに対して可能な限り迅速・丁寧に回答している。つまり、ユーザーの親近感や信頼を勝ち取ることが成功へ結びつく。

3. マーケティングツールとして活用すること
 オンラインショップ経由で送られてきた注文や問合せメールからは顧客リストを作成できる。さらに個人情報を入力してもらうことでさらに効果的なマーケティングツールになる。

4. 旧来の通信販売のセオリーを無視しないこと
 インターネットショッピングの前提は、店舗を持たない通信販売。確実性や守秘性、補償制度や配送など、さまざまな『常識』が存在する。それらを実現し、通信販売のセオリーを守れば現在の通販利用者層を取り込むことができ成功に近づく。

5. 電子決済などの先進技術に目を奪われないこと
 オンラインショップで最も重要なインフラのひとつと見られている電子決済については、成功しているオンラインショップの多くはそれほど必要性を感じていない。代引きや郵便振込みなど既存の決済手段を最大限に活用している。


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